日本パグウォッシュ会議シンポジウム
        「先端/防衛技術と大学−現代科学技術研究のあり方を考える」開催報告

日本パグウォッシュ会議シンポジウム「先端/防衛技術と大学−現代科学技術研究のあり方を考える」は7月14日(金)18-20時に東京工業大学大岡山キャンパスのレクチャーシアターで開催された。

主要メディアからの5名を含む60名弱の参加となり、質疑も活発に行われた。日本パグウォッシュ会議代表鈴木先生と諮問委員の山崎先生による開会の挨拶の後は、MIT Research affiliateで今秋東工大に特任教授として赴任予定のゴシュロイ氏による基調講演となった。ゴシュロイ氏は、元レーザー技術者で、その後米国議会上院・議会監査局で国防技術研究開発の評価を長年務めた経験から米国の軍産複合体を知悉しておられ、多くのデータを提示しながらの講演は非常に説得力があった。45分間ほどの基調講演のポイントは、以下にまとめられる。


1) 冷戦後の米国が、ソ連崩壊後にもかかわらず冷戦時代と同等かそれ以上の巨額の軍事費を維持し、21世紀の「テロとの戦い」とは全く関係のない高度兵器開発をすすめ、しかもその多くが高価だが欠陥システムで、税金の壮大な浪費となっている。


2) 米国防総省は米国の大学に巨額の軍事研究予算を充当して委託研究を行っている(MITは公開基礎研究に約100億円、Lincoln Labの秘密研究に約900億円、総額1000億円も国防研究費が投入されている)。大学における国防総省委託研究を取り仕切るProject Managerは巨額予算と人事を掌握するため、腐敗の温床となる。また国防研究が基本的に秘密であるため、同分野研究者間での査読 (Peer-review)が行われず、研究の質が保証されない。また、国防予算の殆どは、開発予算として兵器開発する防衛産業側に流入する。結果として、米国では巨額の軍事研究開発予算(年間約9兆円)が投入されているにも関わらず、研究の質の著しい低下が起きている。


軍事研究が研究の質の低下を招くというゴシュロイ氏の指摘には、多くの参加者が驚き、メディアからは追加の取材の問い合わせが相次いだ。

シンポジウム後半は、小沼教授、東工大名誉教授細谷先生(量子力学)、堀田先生(プラズマ理工学)によるパネル討論会(司会:池上)で活発な討論が展開した。小沼先生からは、戦前の帝国日本の軍部のあり方や米軍の非人道的兵器開発の実態に照らして真摯な警鐘を鳴らされた。細谷教授からは、米軍諜報関係者が戦略的分野の日本の科学者を常に監視し、贈賄工作で懐柔までしようとする衝撃的実態が指摘された。堀田教授からは、日本の防衛装備庁が進める大学への研究開発資金投資に堅実さが欠けるとの指摘があった。

シンポジウム後は、飲み物とスナックで意見交換会がもたれ、講演者と聴衆が多く参加して時間を大幅に超過して談話を楽しんだ。

今回のシンポジウムを端緒として、今後、軍事技術研究開発をテーマとする研究会を定期的に開催していきたい。


文責:池上雅子(東工大教授・日本パグウォッシュ会議運営委員)

【開催概要】
日本パグウォッシュ会議シンポジウム
「先端/防衛技術と大学−現代科学技術研究のあり方を考える」
​日  時:2017年7月14日(金)18-20時 
場  所:東京工業大学大岡山キャンパスレクチャーシアター
参加者数:約60名
主  催:日本パグウォッシュ会議
共  催:池上雅子研究室(東京工業大学)

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