日本パグウォッシュ会議年頭メッセージ

2022年1月

新型コロナウィルス感染症(COVID‑19)が発生して以降、世の中は大きく変貌しました。2021年の新型コロナウィルス感染症による国内の死亡者は約1万5千人となり、オミクロン株の出来によって、現在も、医療機関、医療従事者には大きな負担が続いている状況です。これまで以上に、人類的課題に対する国際協調の下での理性と科学に基づく行動が必要になっています。

核兵器をめぐる世界の情勢も変化しています。2021年1月に発効した「核兵器禁止条約」(TPNW)は2022年1月現在、59の国が批准するに至り、また、NATOに加盟するノルウェー、12月発足のドイツの新政権が、第1回締約国会議へのオブザーバー参加を表明しました。オミクロン株の感染者急増により核不拡散条約(NPT)再検討会議は4度目の延期の止むなきにいたりましたが、一方、核保有国である中国、フランス、ロシア、英国、米国は、「核戦争は決して戦ってはいけない・・・NPT第6条に記されている核兵器の不拡散と核軍縮に向けた義務を果たす」とした首脳共同声明を1月3日に発表しました。

 

他方で、東アジア地域では米中及び北朝鮮の核軍拡、欧州ではウクライナをめぐる米露の対立により、地域紛争や核戦争のリスクが高まっています。特にアジア・太平洋地域では「中国の脅威」「台湾有事」等を名目に、米・英・豪3か国による「AUKUS」創立など軍事同盟強化の動きも顕著です。この中で日本政府は、防衛費の増額、「敵基地攻撃能力」の検討開始、自衛隊と米・豪などとの関係強化の方向に踏み出し、昨年10月衆院選後の国会情勢では、自衛隊の憲法明記を中心とする改憲議論が勢いを増しています。一つ間違えばアジアが武力衝突の場となり、日本がその最前線となる可能性すらある情勢で、このような動きが地域の緊張をさらに高める方向に働くことは明らかです。

 

軍事的緊張、核戦争の危険性が高まっている状況に対して、日本政府のなすべきことは、非戦・非武装の平和を目指す日本国憲法に基づき、国際紛争を武力ではなく、あくまで非軍事的手段により解決する外交を展開することです。核兵器のない世界を牽引する立場から、核兵器禁止条約発効後の世界において、核兵器国と非核兵器国の橋渡し役を担えているか検証し、同条約に真剣に向き合い、少なくとも締約国会議にオブザーバー参加し、NPT第6条に基づく核軍縮と核抑止に依存しない安全保障政策の実現のために、核兵器廃絶に向けた新たな歩みを目に見える形で示すべきです。

 

日本パグウォッシュ会議は、核兵器廃絶と戦争廃止の理念に基づき、世界の憂慮すべき情勢の対話による解決に向け、科学者の社会的責任を果たし、皆様と共に活動していく所存です。

日本パグウォッシュ会議会長 広渡清吾
同代表 稲垣知宏

 日本パグウォッシュ会議  Pugwash Japan