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非公開ワークショップ「欧州における核兵器と安全保障の課題」に参加して


会場となったNational Liberal Club 近くの公園Whitehall Garden

国際パグウォッシュ会議と英国国際問題外交研究センター(Center for International Studies and Diplomacy)共催の非公開ワークショップ「欧州における核兵器と安全保障の課題」が9月26日~27日、英国ロンドンで開催された。欧米の専門家約40名が参加。日本(および北東アジア)からは筆者1人であった。 パグウォッシュ会議の特徴は、政府の元大使、軍関係、NGO、研究者など多様な専門家が、ほとんど公式のプレゼンもないまま、自由に意見交換を行うことで、チャタムハウスルール

が徹底している点である。また、「対立を超えた対話」のキャッチフレーズにあるように、核問題についても多様な意見の参加者がいるため、活発な意見交換が行われる。一方、合意を達成するのは難しく、会議の成果が目に見える形では得られない面がある。そのような特徴がまさに、今回の会合でも活発でかつ有意義な意見交換が行われた。テーマである「欧州における核兵器」の問題は、日ごろ我々が直接議論を聞く機会が少ないので、大変参考になった。

会議のアジェンダとして、①欧州に配置されている戦術核兵器の価値、目的は何か?②旧ソ連・ロシアの(戦術)核兵器との関係は?③一時実現すると思われた「欧州における戦術核兵器の撤去」は可能か?その障害は?④NPT非核保有国への配置・各シェアリングは国際法上合法か?の4点があげられた。 我々としては、北東アジアの核問題にどのように参考になるか、また世界の核軍縮・不拡散にどのような影響を与えるか、の視点から次の4点が注目された。 第1に、「核兵器は軍事的に利用価値がない(militarily useless)」という合意が、欧州の専門家(安全保障、軍事両方)にできている、という点である。その背景には、米国の通常兵器能力があまりにも強大という点も見逃せない。いずれにせよ「核兵器は軍事的には使えない兵器」であるが、「政治的には意味を持つ」という発言が多く、もはやこの認識は広く共有されているといってよい。具体的に言えば、いわゆる「発射準備態勢(readiness)」という考え方があるが、欧州に置かれている戦術核兵器は、冷戦時代の「数分」からいまや「~月」の単位になっているという。

会場のそばに立っている、英国軍兵士を称える銅像

第2に、NATOの非核兵器国(ベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、トルコ)に配置されている核兵器、および「核兵器のシェアリング」はNPT違反ではないか、という議論である。NPT発足時に旧ソ連・米で合意したときと現状は異なっており、今後同様な配置が別の地域で行われれば、必ず問題になるという指摘は、北東アジアにとって重要だ。 第3は、地域の核軍縮は、地域の諸国がイニシャティブをとって、核兵器国に要請しない限り、なかなか実現しないという点である。NATOにおける核兵器撤去をオバマ政権が真剣に検討した可能性が高いが、結局NATO諸国側からの反対が多く実現していない。これは、「先制不使用」の時にも見られた。北東アジアもまったく同様で、日韓から声を上げていく必要がある。 第4に、北東アジアには、核軍縮はもちろん、通常兵器にかかわる信頼醸成対話の場もない。北朝鮮問題は深刻だが、北東アジアの通常軍備の拡大もまた深刻である。欧州には少なくとも、協議の場がトラック1,1.5、2と多様に存在する。北東アジアでも早急にそのような信頼醸成の場が必要である。 会議では、コーヒーブレーク、食事、そしてホテルバーでの懇親の場が十分に設定されており、異なる考えの専門家や通常話

が聞けない外交官、軍事専門家と貴重な意見交換ができたことも大変ゆうえきであった。


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